サムネイル: ”【ライオン株式会社様×.&対談】事業は実現しなければ意味がない 顧客伴走による事業創出:おくちプラスユー事業開発支援”

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”【ライオン株式会社様×.&対談】事業は実現しなければ意味がない 顧客伴走による事業創出:おくちプラスユー事業開発支援”

(左)ライオン株式会社 ヘルス&ホームケア事業本部 オーラルケア事業部 武藤美穂様
(右)ドットアンド株式会社 取締役 石塚修吾

革新は起きるものではなく自ら起こすもの そう信じると共に世界を前進させてゆく

ドットアンド株式会社のコーポレートサイトにあるこの言葉は私たちの理念。会社の設立以来、この理念に従って、数々の新規事業を立ち上げに参加してきましたが、この夏、弊社はまた一つ、新たな事業が生まれる瞬間に立ち会うことができました。

その事業は、ライオン株式会社様が運営する「おくちプラスユー」。歯の健康やケアについて専門家が情報発信するオーラルケアセミナー、口腔内の健康状態がわかる唾液検査、そしてe-learningなどのオーラルケアサポートコンテンツで構成される企業向けの健康経営支援サービスで、オーラルケアに関する情報と共にオーラルケアグッズを提供することにより、オーラルケアの習慣化を意識付け、従業員の方々の歯の健康を向上させることを目的としています。サービスリリース以来、導入企業が増えているこの事業の背景には弊社によるサポートがありました。

新規事業立ち上げにとって大切なこと、そして、弊社伴走による価値は何か―― ライオン株式会社ヘルスホームケア事業本部オーラルケア事業部副主任部員の武藤美穂様と担当した取締役の石塚が、事業立ち上げ初期から現在までを振り返って語りました。

 

サーチライトが必要だった

――新規事業立ち上げの経緯についてお聞かせください。

ライオン株式会社 武藤様(以下、武藤):当社の2030年に向けた経営ビジョンの中には既存ビジネスの進化と新規ビジネスの発足が掲げられており、オーラルヘルス、インフェクションコントロール(衛生ソリューション)、スマートハウスワーク(新しい家事習慣の創出)、ウェルビーイング、という成長を目指す4つの提供価値領域が設定されていました。そのオーラルヘルス領域の新規事業の専任担当者の1人が私でした。

弊社では、海外での事業展開もしていますが、人口減少が進む中、やはり「物を売って終わる」フロー型のビジネスからは脱却していかなくてはなりません。お客様と継続して繋がるストック型のビジネスが求められています。

私は新規事業の担当前は、商品開発を担当していましたが、新規事業の経験があるわけではなく、また会社自体も新規事業開発の知見が充分ではなかったため、いつ、どこの段階で、何をやらなくてはいけないかをサーチライトのように照らし、指し示してくれる存在を求めていました。

そこで、ドットアンド株式会社(以下、「ドットアンド」)様に事業立ち上げから支援をしてもらうことになったのです。

課題や論点整理の重要性

――どのようなスタンスで支援をしていたのでしょうか。

ドットアンド取締役 石塚修吾(以下、石塚):オーラルヘルスという領域と、ストック型ビジネスという方向性はあらかじめライオン様の方で設定されていました。

ですので、それを踏まえて、新規事業で検討すべきイシューに照らして、必要な課題を洗い出していきました。

具体的には、生活者・企業のニーズ、世の中の課題とライオン様の強み・資産を照らし合わせて、どこの市場を狙うのかを定めました。また、ニーズを把握するために、実際に顧客の元に武藤様と一緒に私自身も足を運びました。

ライオン様は基本的には物を売るビジネスを展開しており、サービスを開発してリリースするという経験は少なく、そうした状況の中で知見や経験をどのようにして築いたら良いかということをまず考えました。

そして、武藤様とチームの一員として検討を進めていく中では、何を目指しているのか、どこが重要なのかを常に確認しながら進めていきましたね。

武藤:石塚さんはまさにチームメイト、伴走パートナーでした。毎週開催される定例会で密に議論を重ねるだけではなく、今後チームとしてどう進んでいくべきかを、定例会とは別で相談もしていました。都度課題や論点の整理をしてもらうことによって、事業の遂行がスムーズになり、本当に助かりました。

――今回の新規事業の立ち上げにおける支援で意識したことはありますか。

石塚:「おくちプラスユー」のサービスではオーラルケアグッズを配布するので、ライオン様のオーラルケア製品に触れる機会が増え、サービスを通じて、製品の認知拡大、使用率の向上が見込めます。それによって、純粋な新規事業の売上だけではなく、既存事業の売上増分も見込めるというシナジー効果を得ることも意識しました。

また、新規事業に限った話ではないのですが、ご担当者の仕事の進め方を見極めることも大切だと考えています。人によって、心地よい役割分担の仕方が異なりますので。武藤様はご自分できちんと考えたことを社内で話し、物事を前に進めていくタイプなので、伴走パートナーとして後方支援に徹する形を取りました。

お客様へのヒアリングから伴走

――振り返って、どのフェーズが一番困難だったと感じますか。

武藤:プロジェクトが本格発足したのは2020年4月ですが、そこから2021年7月ぐらいまでの「やりたいこと」を決定する作業は、さほど難しくはなかったです。その中から、「本当に求められていること」を見極めて、実現していく作業が大変でした。

例えば、サービスの提供内容に関しての絞り込みもその一つです。オーラルケア製品を職場ですぐに購入できる仕組みなど考えましたが、顧客へのヒアリングを重ねていく中で、それが求められているかというとそうではなかった。

様々な制約がある中で、顧客が本当に求めているものは何か、それが本当に自分達の事業にとって必要なことなのかを見極め、迅速に事業化するという視点が必要でした。

人事部の方や健康保険組合の方など健康経営を推進している担当者の方々が抱えている課題は、多くの従業員が手軽に参加でき、かつ満足度も高い施策がなかなか実現できないということでした。健康経営で定番の運動や食事の見直しなどは、健康意識が低い従業員にとっては、日常生活を意識的に変えないといけない部分が大きく、非常に取り組みハードルが高いものになっていました。

その点、「おくちプラスユー」のサービスは、ほとんどの従業員が毎日実践しているオーラルケアをベースにしており、情報に触れ、意識が上がったタイミングで必要なグッズをお渡しすることで、すぐに取り組めて行動変容に繋げやすいサービスになっています。

実際にご利用いただいている企業のご担当者様、従業員様にも満足いただけています。

また、オペレーション設計の段階でも、社内の様々な業務ルールや規制に適合するように落とし込んでいくことにも一定の苦労がありました。その点では、これまでのご経験で様々な業務を見ていた石塚さんに助けられました。オペレーションを設計する上で、重要な点についての指摘を受け、マニュアル作りもサポートしてもらいました。業務設計の経験はあまりなかったので、五里霧中で走る中で、サーチライトを照らしてくれる存在でしたね。

武器を用意することが役割

――ドットアンドに支援を頼んでどのような点が一番良かったと思いますか。

武藤:他社事例を豊富にお持ちで、進め方に裏付けがあったことと、何が問題なのか、自分では整理し切れなくなった時などに「ここが問題です」と指摘してもらえることが良かったです。

お客様のニーズやサービスの不具合をまとめずに話すとメンバーには伝わり辛いので、定例会で論点や課題を示せるように整理してもらいました。また、実際にサービスを営業する際の資料などの作成もサポートしてもらいました。

また、経営層から事業に対する承認を得るシーンでも助けられました。3ヶ月に一度、半年に一度の進捗報告の際に承認を取るのは自分にとってハードルが高いことでした。

新規事業はそれを実施すべき論理的な根拠がなければ承認されません。そこで、経営層が求めるものとそれに合致した論理付けや裏付けをアドバイスしてもらえたことは大きかったです。

石塚:コンサルタントとしてファクトとロジックを駆使して提案する経験を積んでいたので、今回のケースでも経営層に対してどんな理由付けで何を報告すべきかの勘所はありました。新規事業でチェックされる最大のポイントはもちろん収益性ですが、事業の目的はそれだけではありません。例えば、今回のケースで言えば、新しい顧客基盤の創出などです。

会社の方針や新規事業の内容によってチェックポイントはそれぞれ異なりますが、大手企業の中で新規事業を創り上げていくには、経営層がチェックするポイントをしっかりと押さえていないと決裁を得て次のステップに進むことはできません。

そうした経営層のチェックポイントを武藤様がクリアに説明できるよう、その時々の経営層の方の興味関心や事業の検討状況に基づきアドバイスすることを心掛けていました。

また、「こういうことが起きたらどうするのか」というリスクを懸念する声にも丁寧に回答しなくてはなりません。

サービス全体を俯瞰して、武藤様が社内でプレゼンテーションする時に「なぜこれが必要なのか」という説明のための武器を作ることが私の役目でした。

武藤:経営層へのプレゼンテーション資料を考える場合にも「こういう視点が欠けているのではないか」と具体的にコメントをもらえるのは非常に助かりました。自分の描いているビジョンと会社全体が目指している方向性が一致しているか、客観的に他社事例などの根拠を持ってアドバイスしてもらいました。

社内の人間だけで考えているとどうしても視野が狭くなってしまいます。壁打ちパートナーとして、石塚さんに今、やろうとしていることが適切なのか否かを長期的な視野で定期的にチェックしてもらえることが良かったですね。

「絵を描くだけ」にならないために

――新規事業の開発にあたって武藤さんご自身にプレッシャーはあったのでしょうか。

武藤:ありました。オーラルヘルス領域の中でいくつか新規事業の案件があったのですが、第1号案件がこの事業でした。

しかし、当初、このプロジェクトの専任者は私しかおらず、他の定例会メンバーは兼任者でした。石塚さんは常に客観的な視点を持ちながら、チームメイトとして伴走し、手を動かしてプレイヤーとしても動いてくれました。

新規事業はやはり一人では立ち上げることができません。常に意見交換、議論を積み重ねて作り上げていくことが重要だと思います。

石塚:意見交換、議論を手触り感のある有意義なものとするためには、同じ目線で現場に向き合うことが大切だと考えています。今回もインタビューや顧客企業へのサービス提供の際に、武藤様と一緒に顧客企業に伺いました。コンサルティングは、クライアントと共に企画を練り上げて、それを経営層に提案して終わり、というケースも多い。ところが、事業は実際に形にならなければ意味がありません。そのことは事業会社に在籍していた頃の経験で痛感しているので、単なる「絵餅」にならないよう、常にお客様の立場に立ち、事業の実現に向けて自分がサポートできることはすべてやっていました。

――おくちプラスユーのお客様からの反応や今後の展望についてお聞かせください。

武藤:有難いことに社内外から問い合わせが相次いでいます。導入企業も増えており、今期の目標は達成できそうです。

サービスの一つである唾液検査を実施した顧客企業の従業員の中には、唾液検査の結果がきっかけとなって、改めて歯科医に行こうと決意した人もいらっしゃったと聞きました。

今後も継続的にサービス内容を拡充し、企業の中で従業員のオーラルケアに関する施策を実施することを定例行事にしていきたいと考えています。

また、海外に比べて、日本は歯に対するリテラシーは未だ低く、デンタルフロスや洗口液を使用することの重要性は認識されていません。「おくちプラスユー」を通じてむし歯や歯周病予防など歯に関する健康情報を発信することにより、日本のオーラルリテラシーの向上にも貢献していきたいと考えています。