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“経営コンサル”を再発明する(2/3)~獅子身中の虫が変革を阻む
ファクトとロジックを武器に、サバイバル状態の企業経営に「秩序」をもたらした経営コンサルは、時代の変化に伴い大きな自己変容のチャレンジに直面している。従来の成功モデルが足枷となる中、「イノベーション創造のプロ」としての非連続な事業変革に向けては、厳しい道のりが続いている。dots. andは再帰するサバイバル時代を切り開く、新たなプロフェッショナルファームとして、経営コンサルの再発明を図る。
獅子身中の虫が変革を阻む
経営コンサルティングファームにとっての獅子身中の虫は、コンサルビジネスの成功をこれまで支えてきた、「ビジネスモデル」、「コアバリュー」、「マインドセット」に存在すると考えている。
ビジネスモデル
経営コンサルティングのビジネスモデルは一言で言うなれば「高級派遣」である。
1. 高給を提示して優秀な人材を集める → 2. シニアコンサルタントの知見を優秀な人材の手数でレバレッジする → 3. クライアントに時間当たりの業務貢献を高単価で販売する → 4. 高利益を確保し人材に還元(1.に戻る)
このモデルの要点は、時間当たりの業務貢献を販売している点にある。コンサルティングは、決して成果を売るビジネスモデルではない。つまりコンサルビジネスの持続性を担保するためには、必然的に、「当初から十分な予算が確保されており」、「不確実性が低く、ある程度最終アウトプットが見えており(顧客の満足度を担保できる可能性が高く)」、「業務遂行のために手数を必要とする」案件にターゲットを絞って攻略を図るべき、ということになる。(他方、単価引き上げのために、逆にプロジェクトのチャレンジの大きさを喧伝するのが経営コンサルの通常のスタンスであるが。)経営コンサルの組織構造はそのために最適化されている。
このモデルはしかし、現代の企業が期待する、未知のイノベーション創出に、マッチするとは言い難い。それらの案件は往々にして、「予算は十分に充当されておらず」、「構想初期で不確実性が高く」、「手数ではなくアイディアの質が求められる」ケースが多い。しかし上記のモデルを取っている経営コンサルにとって、それらの案件に投資することのリスクは事業継続性の観点から極めて大きい。
現在のビジネスモデルによって、コンサルティングビジネスは人材を早期に戦力化することに成功し、規模の拡大を成し遂げてきた。だがしかし、現在では、その成功モデルが、変革を阻む重い枷となっている。
コアバリュー
経営コンサルタントは何のプロフェッショナルであろうか。それは決して「経営」のプロフェッショナルではない。経営コンサルタントは、「問題解決」のプロフェッショナルである。近代経営コンサルティングは、長年に渡って、論理性を駆使した「説得」の技術の体系化を進めてきた。解くべきイシューを設定し、その解法を設計し、必要な情報を収集・分析し、論理を演繹的・帰納的に組み立て、一連のストーリーにする方法論の体系である。その方法論は敢えて簡明に述べるならば「分解」の体系であり、情報の「綜合」による新奇性の発見については、専門外であると言えるだろう。つまり、より端的に言えば、経営コンサルはイノベーション創出のプロではない、のである。
前述の通り、各社ともこの欠落に、「デザイン思考」のピースをはめることを狙っている。(デザイン会社の買収も相次いでいる。)但し、現在までのところ、論理思考とデザイン思考を高度に組み合わせて方法論として確立しているファームは殆ど存在していないものと思う。(かつ、さらに個人的にはそもそもイノベーション創出の方法論=デザイン思考ではないと考えている。)
論理性を武器に価値を高めてきた経営コンサルが次のステージに進むには、従来の強みを活かしながらしなやかに変革を成し遂げる必要がある。しかし過去の強み、コアバリューに対するこだわりがその変革を遅らせる。
マインドセット
ファームの成熟・大企業化に伴う、コンサルタントの「矜持」も、時に変革に逆行する。高度な業務スキルを早い段階で身に着けることができるコンサルタントは、仕事に対する自信とプライドを高く持っている。クライアントが考えるべきイシューをプロフェッショナルとして引き受け、クライアントの一歩二歩先をいく答えを短期間で提示することに誇りを持っている。その誇りは、時として驕りとなり、クライアントを軽視する姿勢につながる。その姿勢はクライアントに対する自説の強引な押し付け・説得へと連なり、新しい価値の可能性を共に探る芽を消し去りかねない。
また、組織としての大企業化は、ファーム内に緩んだ空気を蔓延させている。古参の中間管理職を中心とした、現状維持の姿勢、社内における立ち回り重視の傾向は、残念ながら一定数確実に存在する。クライアント企業が非連続の成長を志す中、そのようなマインドのコンサルタントが果たしてそのパートナーとして適格であろうか。
経営コンサルは、自己変容のチャレンジに直面している。変革の実現に向けて、過去の成功モデル・体験がそのボトルネックになっている。経営コンサルティングビジネスが、今後も価値ある産業であり続けるためには、過去に固執せず、自ら非連続の成長にチャレンジする姿勢が重要であろう。
では、dots. andはその中で何を目指していくか。