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【大企業×新規事業の難しさ⑤】タスクはタスクのためならず
昨今、書店に行けば様々な「新規事業開発」をテーマとした書籍を見かけます。
我々もまた、一緒に仕事をするクライアントのメンバーが大変良く勉強されており、我々も一生懸命勉強しなければと日々思っています。
ただ、こうしてたくさん勉強されている方ほどよくある、落とし穴があるように感じます。
それは、新規事業をつくる行為を「タスク」としてとらえてしまう、ということです。
具体的には、「このフレームワークに従って整理を…」「カスタマージャーニーを書いて…」など、
様々な方法論を勉強しているだけに、それを「タスクとしてやらねばならない」あるいは、「これをやれば新規事業ができる」という感覚でプロジェクトを進めてしまうのを散見します。
実際には、これらのフレームワークやタスクは、方法論の1つであって、それを実施したからといって必ずしも新しいビジネスの成功に近づくことを保証するものではありません。
我々は、特に検討の初期段階において、「ビジネスの確度と解像度を高める」ことを大事にしています。
確度を高めるというのは、失敗する確率を下げること。
(※これも重要なテーマであり別途論考したいと思いますが、我々は失敗をゼロにできるとは思っていません。「ちょっと調べればそんな失敗回避できるよ」という、もったいない失敗は減らしたい、ということです。)
解像度というのは、ビジネスをより具体的な形にしていくこということ。
生まれたてのビジネス・アイディアは、限られた情報や知識に拠って立つ弱弱しいものです。そのイメージはまだまだ曖昧で、成功するのかどうかもわからないものです。
だからこそ、様々なわからないこと・曖昧なことに対して調査をしたり、仮説を立てて検証したりしながら、「こういう形なら儲かりそう」というビジネスの輪郭を、よりはっきりと描いていくプロセスが必要なのです。
ビジネスの確度・解像度を高めてくれる問いは、パッと思いつく範囲でもどんどん出てきます。
例えば
「顧客課題は本当にあるの?」「その顧客はどれくらいいるの?」「同じような課題解決に顧客はいくら払っているの?」「市場規模はどれくらいになるの?」「競争優位性はあるの?」「今の時点で競争優位がないとしたらどうやって作れるの?」「うちの会社がやる意味(ほかの会社より有利になれるポイント)はあるの?」「新たに研究開発すべきものはあるの?」「技術的課題は他社との協業などでクリアできるの?」「採算は見合うの?」…………
大事なことは、以下の3点をきちんと考えながら日々の活動に臨むこと。
「今、どのような問いに答えるために、どんなアクションをすべきなのか?」
「それがわかったら、このビジネスの確度(解像度)はどれだけ上がるのか?」
「アクションの結果として、何が新たにわかり、それを踏まえて、このビジネスをどの方向に導くべきか?」
我々がクライアントと共にある時、一番意識しているのはまさにこのポイントです。
ここをきちんと押さえずに無目的にタスクをこなしても、「時間と工数はかかったが、ビジネスの確度も解像度も上がらない」なんて事態に陥りがちです。
逆に、きちんとした目的意識のもとで、最適なフレームワーク・ツールを選択することができれば、そのフレームワークやツールは最大限に効果を発揮します。目的達成のために必要な、考える視点や順序を提供してくれるので、より簡単で確実に、思考を深めることができるからです。
タスクはあくまでタスク、プロジェクトの一部です。
大事なことは、ビジネスを前に進める(=確度と解像度を高める)ことなのです。