サムネイル: “経営コンサル”を再発明する(1/3)~経営コンサルの存在意義が問い直されている

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“経営コンサル”を再発明する(1/3)~経営コンサルの存在意義が問い直されている

ファクトとロジックを武器に、サバイバル状態の企業経営に「秩序」をもたらした経営コンサルは、時代の変化に伴い大きな自己変容のチャレンジに直面している。従来の成功モデルが足枷となる中、「イノベーション創造のプロ」としての非連続な事業変革に向けては、厳しい道のりが続いている。dots. andは再帰するサバイバル時代を切り開く、新たなプロフェッショナルファームとして、経営コンサルの再発明を図る。


経営コンサルの存在意義が問い直されている

ファクトとロジックを武器とする近代経営コンサルティングは、「サバイバル」状態であった企業経営に、「秩序」をもたらした。別の言い方をすれば、企業経営を、一部のカリスマ的経営者の経験・センスに基づく秘伝の達人芸から、合理的な判断・検証が可能な体系立てた方法論へと民主化したとも言える。事実と論理に基づく合理的判断は、今日に至るまで、企業の成長を支え、世界経済の発展に少なからず貢献してきたと言って良いだろう。そして、その副産物として、「論理」は、現代ビジネスの世界において最も価値ある共通言語となった。

世界的な経営コンサルティングファームは、各社各様に画期的な分析・判断のフレームワークを開発し、世界の名だたるリーディングカンパニーの女房役として、その成長を支えてきた。経営コンサルタントは、「秩序の旗手」としてまさに時代の寵児となり、多くの優秀な人材を引き付ける、花形職業としてその地位を確立したのである。論理を武器としたコンサルティングビジネスはその裾野を広げ、会計、法務、IT、業務など各専門領域に応じたファームもその勢力を拡大した。現代において、コンサルティングビジネスは一大産業としてグローバルレベルでその根をビジネス界にしっかりと下ろしている。

そのコンサルティング産業は、今まさに大きなチャレンジに直面している。再帰する「サバイバル」時代を生き抜くための、自己変容の挑戦である。

テクノロジーの急速な発展を背景に、世界は流動化を続けている。「スピードの加速」、「コンバージェンスの進展」、「ディスラプターの躍進」がその変化を端的に示すキーワードである。

流動化を示す3つの潮流流動化を示す3つの潮流

これら3つの変化が意味すること、それはすなわち、企業戦略における「選択」から「創造」への力点のシフトである。現代の企業経営においては、合理性に基づく正解の識別のみで競争優位性を担保することは困難であり、変化の早い時代に先んじ、自らリスクをとって新たな市場を創造する開拓者精神が求められているのである。

パラダイムシフトが起きるとき、従来築いた強みは一転して弱みへと変わる。論理の力でビジネスの世界に秩序をもたらした経営コンサルティングも例外ではない。今まさに、クライアント企業から求められる、合理性を超えた「イノベーション創造」の期待に対して、いかに応えていくか、ビジネスとしての正念場を迎えているのである。

経営コンサルティングファーム各社の取り組みは現在までのところ、大きく3つの流れがあるように思う。「方法論としてのデザイン思考の取り込み」、「テクノロジーキャッチアップ」、「クライアントとのJV等パートナーシップ関係の深化」である。一部で成功事例も出つつあるが、長くコンサルティング業界に身を置いていた自身の経験からすると、どの取り組みもまだ道半ばというのが正直な所感である。特に思考法については、従来の論理思考とデザイン思考の融合が上手くいっている例はほとんどなく、表面的な交流に留まっている。

経営コンサルが自己変容を成し遂げる上で、一体なにがボトルネックとなるのか?そこには、組織のうちに潜む「獅子身中の虫」の存在がある。