サムネイル: 【大企業×新規事業の難しさ⑥】アジャイルの手前で考える重要さ。

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【大企業×新規事業の難しさ⑥】アジャイルの手前で考える重要さ。

既にこれまでのコラムでも何度か触れたポイントであるのですが、
我々は、新規事業の特に初期的なフェーズを検討する際、「ビジネスの確度と解像度をあげる」ことに気を配っています。

なぜこのような意識を持っているのか。
そこには、我々も過去に経験した葛藤がありました。

ここ数年「アジャイル」という言葉をよく耳にします。あるいは「リーンスタートアップ」という言葉も。
これについては様々な書籍・言説があふれており、ここに改めて詳しい説明を書くようなことではないかもしれません。
私たちも、ともすると「考えすぎ」になる傾向があると自覚しており、このような考え方をよくよく学び・身につけて日々のビジネスにつなげていかなければと思っています。

しかし一方で、「考えること」とのバランスも重要だと感じることも、たびたびあります。
新規事業立ち上げチームをつくり、いくつもの事例を立ち上げてみたものの、どうしてもうまくいかないということでいろいろお話を伺った、とある企業。
この企業では、新規事業チームの中にチーム内チームを立ち上げ、複数の案件を同時進行で進めていました。比較的予算もきちんと確保し、「失敗してもいいよ」ということでどんどんモックアップをつくったり、ベータ版のサービスでPoCを実施したりしていました。
しかし、そんな取り組みもだんだんと進んできたというのに、モノになりそうなビジネスが生まれてきません。
チームのミーティングでも良い成果を報告できるチームが少なく、チーム全体としても閉塞感を感じるような状態になってしまっていたのです。

様々お話を伺ってみた結果、気になったことがありました。
それは、この会社が同時進行で進めている1つ1つのビジネスアイディアを聞いてみると、それぞれ、いくつかの疑問が沸きあがるアイディアが多かったのです。
例えば、アイディアを出した人の個人的な課題に立脚したビジネスで市場の広がりに疑問があった例、ちょっとデスクトップリサーチをしただけでも同じようなビジネスがマネタイズに失敗している例、同じような課題に応える別のサービスが(調べなくても知っているくらいに)隆盛している例など…

私たちが感じたのは、「このアイディア、筋がいいのかな?」という極めて簡単なレベルの検証をしないまま、大量の資料や、モノ・サービスを作ることに移ってしまったのではないか、ということ。そして、貴重なチームの時間とリソースをまだ粗いアイディアのために費やしてしまったのではないか、ということです。
その結果として、「様々手を付けてみたけど、ちゃんとビジネスになったものがない」という感覚が染み付いて、チームとしても自信を喪失しているように感じられました。

ここでの問題は、ビジネスアイディアの質そのものではありません。
世に出た優れたアイディアにも、最初は弱弱しく、誰も確信が持てないような時代があっても不思議ではないでしょう。
問題は、ビジネスアイディアの質がどうかもわからないまま、いきなり時間のかかる作業に移ってしまい、そこにチームのリソースを使ってしまったことにあると考えます。
先ほどの例に限らず、ちょっとしたリサーチ、ちょっとした議論、ちょっとした検証を通じて、このアイディアは面白いかも…なのか、これは難しいかも…なのかを見極めることはできるケースは、実は結構あるように感じます。

「最後は顧客(市場)に聞いてみないとわからない」という命題が真だとしても、「最初は時間をかけて顧客(市場)に聞いてみなくてもできることはある」という命題の否定にはなりません。
むしろ最初は、手軽な、時間もリソースもあまりかけない形で「ビジネスとしていけそうなのか(=確度)」「実現するとしたらどんなビジネスになるのか(=解像度)」をクイックに見極め、そのうえで具体的なサービスの構築に移ることが重要です。

一方で、「机上でどんなに考えても、顧客の声には及ばない」という考えも、もちろん理解できます。
もしも1円も使うことなく、明日突然に、我々のビジネスアイディアを顧客に当てて試すことができるのならば、我々だってそうしたい。
しかし、そこに至るまでには様々な準備と時間がかかります。
だからこそ、序盤の少ない時間とリソースでビジネスの確度と解像度をある程度高め、質の高いビジネスアイディアをきちんと顧客に当てられるようにチームを運営していくことが大事です。
前半のリソースは節約して、後半、顧客に当てるときには、何度もサービス作り直し、試行錯誤しながらサービスの質を高めていきましょう。ここには、きちんとリソースを投下すべきところ。そのメリハリが大事です。

この課題意識に対して、我々は2つのソリューションを準備しています。
1つは、ビジネスアイディアのクイックレビュー。
まだ生まれたばかりのアイディアに対して、どのような論点があるのか、あるいは、何を検証していく必要があるのかをクイックにレビューします。必要に応じて、デスクトップリサーチなどのサポートも追加で組み合わせ、まだまだ輪郭のないモヤモヤしたアイディアに対して「最初の輪郭」と「次のアクションの指針」を提供します。
もう1つは、ステージゲート管理の設計と運用のサポートです。
実はこの議論の裏側には、新規事業をマネジメントする側のスタンスの問題もあります。
なにを、どこまでわかっていれば、次の投資に進むことができるのか。保守的に考えすぎると、サービスを通じて顧客と向き合う前の段階で時間を浪費してしまう一方、きちんと判断をしないと時間とリソースの浪費になってしまう。
さらに、そのバランスは、会社のガバナンスや組織風土、社員のメンタリティに合わせて調整されなければならない。ですので、組織設計やガバナンス設計の段階から入り、ステージゲートを適切に設計・運用できるようにするところも併せてお手伝いさせていただいています。