サムネイル: 【大企業×新規事業の難しさ⑦】で、何をすべきなの?……我々も「一緒に」考えるしかない。

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【大企業×新規事業の難しさ⑦】で、何をすべきなの?……我々も「一緒に」考えるしかない。

これまで、いくつかの観点から大企業における新規事業開発の難しさについて述べてきました。
見てくださった方、感想をくださった方、ありがとうございます。
多少なりとも、このコラムが皆さまに何らかの示唆を提供できていれば幸いです。

一方で、「こうすれば上手くいくよ」「これをやるべきだよ」ということを一言で書き表すことのできないもどかしさも感じています。
それは、執筆者の表現力・言語化能力の問題も間違いなくあるのですが…
それだけではなく、新規事業開発のために「今取り組むべきこと」は、置かれた立場・状況によって一義的には決められないという理由もあるように思われます。

弊社メンバーが、過去に関わったことのある対極的な企業の例で見てみます。

A社は、極めてシステマティックな企業運営を行っている某メーカー。
こちらの会社は、私たちが関わりを持たせていただいた時点で、ステージゲート管理の仕組みもきちんと定義されており、新規事業開発のための標準プロセスがありました。既存事業部との関係性も整理された新規事業開発専門の組織が立ち上げられ、KPIも報告ルールも定められていました。

一方のB社は、管理はシステマティックながらビジネスには個人の裁量が大きい某社。
こちらの会社で支援した新規事業は、既存事業部の中に特命の新規事業チームが立ち上げられていました。この事業部と、新たに立ち上げている事業では、事業ドメインが異なっているという不思議な関係でした(新規事業であるため、全社的に見渡しても、ぴったり当てはまる事業部がないという事情もあったのかもしれませんが)。
当然報告のルールや人事評価の枠組みは、これまでの既存事業部内のものと同じ(個別の人事評価において、新規事業に携わっていることがどう評価されていたのかは不明)でした。

果たして、このA社とB社で、これから取り組むべきことが同じになるでしょうか。

また、私たちの支援する例で言えば、
現場のプロジェクトチームを支援する場合と、レポートラインの最上位にいる役員や事業部長クラスの方を支援する場合では、振る舞い方はどうしても変わってきます。
前者の場合、会社としての新規事業ガバナンスの在り方や報告のルールは所与のものとして受け止めなければなりません。その上で、必要に応じてレポートラインの上役等とも良好な関係を築きながら、新規事業のアイディアを最大限形にしていくことが求められます。
(もちろん我々としては、その会社のガバナンスやルールを重視しているわけですが、プロジェクト支援を通じて感じたガバナンスやルール自体の問題も提起していけるようでありたいと思っています。)
一方で、レポートラインの上層部を支援できる機会があるのであれば、1つ1つの案件の推進をサポートするだけではなく、例えばステージゲートのような管理の仕組みの最適化、チーム組成のやり方、新規事業に取り組むスタッフへの評価の在り方など、プロセスや仕組みの改善も提案していくでしょう。
大企業になればなるほど階層構造が多くなるので、それぞれのレイヤにおいて新規事業を推進するためにできることのスコープが変わってきます。

ある程度のレベルで言えば、「絶対にやっておくべきこと」「絶対にやってはいけないこと」はあるでしょう。
そういったことは、既に様々な形で世の中に出回っている書籍やweb上の言説からも学ぶことができます。

一方で、我々が感じるのは、
「絶対にやるべき/やってはいけない」ことを踏まえたとしてもなお、会社としても、プロジェクトの現場としても、試行錯誤の余地があるということです。
上からの管理と現場の自由度のバランス、仕組化することと試行錯誤することのバランス、止まって考えることと現場に踏み込むことのバランス、失敗を回避する慎重さと失敗も覚悟してチャレンジすることのバランス……
誰にでも当てはまる正解のバランスがあるのではなく、その会社・組織・人にあったバランスがあるのだ、というのが我々の考えです。
これは、大企業における新規事業開発の難しさのポイントであり、ただ1つの目標に向かって1から走ることのできるスタートアップとの一番の違いとして、意識されてよいことだと思います。
このインサイト上の連載を通じて、そのバランスが崩れてしまうケースを見返しながら、読者の方にも示唆が生まれてくればよいなと思っています。
引き続き、我々の直面してきた課題やクライアントの悩みどころを皆さまと共有し、共に解決していけるよう、insightの執筆を続けていきます。
次回以降にも、是非ご期待ください!

我々は、様々な過去の経験を棚卸しながら、今向き合っているクライアントの企業・組織・人にとって最も効果的な施策を提案できる存在でありたいと思っています。