サムネイル: 解像度を高めること。

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解像度を高めること。

新規事業の議論をしながら、
「本当にこの検討は進んでいるのだろうか?」
という状態になることはないでしょうか。

新しいアイディアが出てきたとき、
「おっ!これは面白い!」となり、最初のうちは、「ああすればいい」「こうしたほうがいい」と様々な意見が出てきて議論は大いに盛り上がります。

あるいは、実際にプロダクトを作り始めてみると、机上の議論ではわからなかったようなことが次々と明らかになり、
これまた「どう対応しようか…?」と、考えなければならないことは噴出することでしょう。
そして、実際にサービスをローンチしたとき、最初の顧客がサービスを使ってくれたとき、
様々な反応に一喜一憂しながらも、具体的にどのようにサービスを伸ばしていくか、まさに議論も勢いづいていくものと思います。

こうした、アイディアが出始めた最初の盛り上がりと、実際にモノを作り始めるまでの間の段階に、
冒頭に示したような言わば議論の停滞期のような時期があるように感じます。

私たちは、この期間の検討をサポートすることも大変に多いのですが、
この時期に考えるべきことは、このコラムでもよく書いている通り、「確度」と「解像度」であると思います。

実はこの確度と解像度、というポイントは全く別個に深まっていくものではありません。
基本的には、解像度が高まるほど、
確度が高まる=そのビジネスへの確信が強まっていく、あるいは、
間違いに気づく=違う方向に検討しなければいけないとわかるものです。

では、ここでいう解像度とはどういうものでしょうか。

例えば、あるBtoBのサービスがあり、これが顧客の事務オペレーションの効率を上げるサービスだったとします。
このような検討は、極めて初期的なレベルでは、「このサービスを入れれば、顧客のある業務の負荷は下がるはずだ!」というレベルの着想からスタートしているはずです。
そのうえで、解像度を高めていくとすると、
顧客への初期的なインタビューやジョブシャドーイング、実際のデモを見せてのインタビューなどを通じて、
実際に顧客の業務フローが見えるようになり、そこでボトルネックになっている業務が見えるようになり、
更にその業務が事務全体に占める割合が見えるようになり、
本当にそのポイントの業務負荷が下がることが経営者にとってうれしいのかどうか、
経営の数字的なインパクトがどの程度になりそうなのか、
経営者なら経営判断として、その効率化のためにいくらくらい支出するのかどうか、
現場で作業している人たちのスキル的に業務の変革についてこれるのかどうか、
といったことがわかるようになってくるはずです。

ここまで見えてくれば、自社の想定しているサービスの費用構造との比較の中で、
十分な収益性のあるビジネスになるかどうかわかるのではないでしょうか。

あるいは、「自社のサービスの費用構造との比較」と簡単に書きましたが、
これもまた解像度を高めるべきポイントだと思います。
初期的には「サービスの開発費」と「ランニングコスト」がかかるな、というくらいの認識からスタートしたとしても、
開発費の詳細な見積もりをとり、営業の方法を考えてそこに係る人件費を見積もり、
個社ごとに導入する際の最初の導入コスト(初期設定etc.)がどれくらいかかるのか、
導入しただけで成果が出るのかカスタマーサクセスのような部隊は必要ないのか…
といったことを深く考えていくほどに、業務と費用の全体像が、より詳細に浮かび上がってくるものです。

従って、先週(前回)よりも、ビジネスの要素の1つ1つが、より具体的にわかるようになっていることこそ、この時期における検討の進捗だと言えます。
このように、顧客や費用やソリューションの理解に深みが出て、より深い確信を持つのか、よりよい方向に方針転換をしていくのか、という判断ができているならば、
その検討は前に進んでいると言えるでしょう。
一方で、このような深まりのない状態が続くと、議論の停滞感を生んでしまいます。

今、議論が前に進んでいるかどうかは、過去の資料との時系列の比較でわかります。
先週、先々週の資料と見比べて、新しい発見や示唆の深まりがないまま、議論だけが続くような状態は危険信号。
議論することよりも、実際に顧客やソリューションを深く考えたり、実際の人やモノに当たる時間を作らないといけないタイミングかもしれません。